第62回グラミー賞(室内楽・小編成アンサンブル部門)受賞者、徳永慶子はニューヨークを拠点とする演奏家の一人として注目を集めている。米国ストリングス誌は彼女の演奏について、「しなやかに宙を舞いながら心の奥底まで問いかけてくるような音色が、純粋で透明な弓さばきによって彩られて観客を魅了した」と絶賛。また、音楽の友誌からも「音楽的パワーが強く、表現も個性的」と好評を得た。

コロナ禍で公の演奏活動ができない間も精力的に自主プロジェクトを発足し、2020年にはJukebox Concertsという期間限定のオンラインコンサートシリーズを運営、ニューヨークに住む音楽家たちに演奏の場を提供。これらのオンラインコンサートはチケットを購入した観客はもちろんのこと、米国各地の病院や介護施設でも公開された。2021年にはアメリカに住むアジア系の音楽家たちを募り、アジアの伝統芸能とクラシック音楽の共存・繁栄、そして音楽界でのアジア人への偏見を少しでも少なくしたいという願いのもと、東西古今弦楽器アンサンブル、INTERWOVENを創設した。また、2020年・21年の2回にわたり日本室内学振興財団主催による「音楽でめぐる世界旅行」全国ツアーのリーダーを任され、日本各地でソロや室内楽の演奏を行った。

神奈川県出身。高校2年生で単身渡米し、ジュリアード音楽院予科に編入。その後同楽院より学士、修士号およびアーティスト・ディプロマを得る。2005年から2019年までアタッカ・カルテットに所属。これまでにグラミー賞を始め第7回大阪国際室内楽コンクール優勝、メルボルン国際室内楽コンクール3位入賞およびABCラジオクラシックFM視聴者賞受賞など、受賞多数。アメリカ、カナダ、メキシコ、南米各地、ヨーロッパ、オーストラリア、日本など世界中で演奏活動を続けている。ソリストとしてはこれまでにスペイン国立管弦楽団、バルセロナ=カタルーニャ管弦楽団などと多数共演したほか、2007年の王子ホールでのソロデビュー以降アメリカ、カナダ、日本で多くのリサイタルを行っている。2016年にはソロでのデビュー・アルバム「Jewels」をNY Classicsレーベルからリリースした。

バロック音楽から現代曲、ジャズや邦楽奏者とのコラボレーションなど多種の演奏活動に勤しむ傍ら教育活動にも熱心に取り組んでおり、ジュリアード音楽院、フォーダム大学で個人指導を行っている。マンハッタンにスタジオを構え、ジュリアード音楽院予科や国際コンクールに挑戦する生徒たちそれぞれの個性にあった教育に力を注いでいる。また、時折漫画家としても活動しており、現在インスタグラムで自身の生い立ちや音楽家の生活、猫漫画をコミックエッセイ形式で綴っている。

現在の使用楽器は匿名のスポンサーから永久貸与されている1845年製のJ.B. Vuillaume、弓は1850年ごろNicolas Maireにより作成されたものである。